過敏性腸症候群

ストレスが
影響している!?
過敏性腸症候群とは

ストレスが影響している!?過敏性腸症候群とは過敏性腸症候群とは、腹痛などの腹部の不快感とともに、下痢や便秘を伴う病気のことを指します。
命にかかわる病気ではありませんが、症状によって仕事・学業・家事などに大きな支障をきたします。急な腹痛・下痢が心配で外出が困難になる方もいらっしゃいます。
はっきりとした原因は未だ解明されていませんが、近年の研究ではストレスが発症や悪化に影響しているのではないか、と指摘されています。
治療では、薬物療法や生活習慣・食習慣の見直しとともに、ストレスとの付き合い方についてもアドバイスを行い、症状の改善を目指します。

過敏性腸症候群の主な原因

ストレスとの関与が指摘されている

近年の研究では、ストレスによって脳下垂体からストレスホルモンが分泌され、腸の機能が低下することで、過敏性腸症候群を引き起こすのではないかと言われています。過敏性腸症候群の症状自体がストレスとなり、さらに症状が悪化するという負のサイクルを生み出すケースも少なくありません。
ストレスは、会社・学校・家庭をはじめとするさまざまな場面で蓄積します。それ故に、過敏性腸症候群は誰にでも起こり得る病気と言えます。

腹部・便の異常以外の症状を招くことも

多くの方がご存じのように、ストレスはさまざまな疾患・症状の引き金となります。そのため、腹部の不快感、下痢・便秘以外の症状が現れることもあります。

お腹の症状

  • 腹痛
  • 下痢
  • 便秘
  • お腹の張り
  • 残便感
  • お腹がゴロゴロ鳴る

お腹以外の場所で起こる症状

  • 不眠
  • 不安感
  • 抑うつ
  • 頭痛
  • めまい
  • 肩こり
  • 食欲不振

過敏性腸症候群の症状チェック

過敏性腸症候群の症状チェック
  • 腹痛を伴う急な下痢
  • 慢性的な便秘
  • コロコロとした便しか出ない
  • 腹部の不快感、張り
  • お腹がゴロゴロ鳴る
  • 残便感
  • 排便頻度が一定でない
  • 排便後の一時的な症状収束
  • ストレスによる症状の悪化

腹痛や腹部の不快感といった症状が、排便によって一時的に治まることが多いのが過敏性腸症候群の特徴です。
また過敏性腸症候群は、大きく以下の4つのタイプに分類できます。

「下痢型」「便秘型」「交代型」「分類不能型」と症状別に4つに分類

下痢型

突然の腹痛とともに、激しい下痢があります。そしてこれが、1日に3回以上繰り返されます。1日に10回、20回と症状が現れるケースもあります。日常生活に大きな支障をきたします。

便秘型

慢性的な便秘に見舞われるタイプです。下痢型と比べると日常生活への支障は少ないものの、排便時にもコロコロとした便しか出ない、残便感があるなどの不快感が続きます。

交代型

急な腹痛・下痢と便秘を交互に繰り返すタイプです。

分類不能型

腹部の張り、お腹がゴロゴロ鳴る、おならが多い(ガス型)などの症状が見られるタイプです。

過敏性腸症候群に
なりやすい性格や
年齢・性別

過敏性腸症候群は、年齢・性別を問わず、誰にでも起こり得る病気です。
ただし傾向としては、以下のような方が過敏性腸症候群になりやすい、と言うことができます。

性格

  • 真面目で曲がったことを許せない
  • 辛い時も人に相談する、頼むことができない
  • 人に意見することができない
  • 感情表現が苦手

など

年齢・性別

男女比では「1:1.6」と、やや女性に多く見られます。
男性の場合は30~40代の働き盛りの年代、女性であれば20代と50代での発症が多くなります。
また近年の傾向として、以前はほとんどなかった小学生・中学生の発症も目立つようになっています。過敏性腸症候群が認知されるようになったこと、受験や人間関係、SNSなどのストレスの増大が、この年代での発症を増加させているものと考えられます。

過敏性腸症候群の検査

症状、既往歴・家族歴、服用中の薬、生活状況(ストレスを抱えていないか等)をお伺いし、血液検査、腹部X線検査、腹部エコー検査、大腸カメラ検査などを行います。
過敏性腸症候群の場合、大腸カメラ検査を行っても器質的な問題は見つかりませんが、大腸がんなど他の病気を除外するために必要になります。
当院では、痛み・不安感のほとんどない、鎮静剤を用いた大腸カメラ検査を行っております。初めての方、以前に受けた鎮静剤を使用しない大腸カメラ検査が辛かったという方も、安心してご相談ください。

過敏性腸症候群の治療

薬物療法

腸の働きの正常化を図る薬、便の硬さを調整する薬、腸内細菌叢(腸内フローラ)を整える薬などを、症状・病態に合わせて処方いたします。

生活・食習慣の見直し

自律神経を整えるための規則正しい生活習慣指導、腸の負担を軽減する食習慣指導などを行います。また、ストレスとの付き合い方についても、医師がアドバイスを行います。ご自身で自覚していないストレスが見つかることもあるので、可能な範囲で、気になることは何でもお話しください。

低FODMAP食とは?
過敏性腸症候群の方に
おすすめの食べ物

FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、かつ大腸で発酵しやすい糖質の総称です。具体的には、発酵性・オリゴ糖・二糖類・単糖類・糖アルコールのことを指します。
これらのFODMAPを多く含む食品のことを「高FODMAP食」と言いますが、近年、この高FODMAP食が過敏性腸症候群の悪化に影響しているということが分かってきました。そこで注目されているのが、原因となる高FODMAP食を取り除くという食事療法です。
※低FODMAP食のみを食べていけばいいというものではありません。過敏性腸症候群の原因となる高FODMAP食を見つけ出し、最終的にその食品を取り除いた食事を摂るという食事療法です。

低FODMAP食

  • 米、玄米、十割蕎麦、ビーフン、フォー
  • 卵、牛肉、鶏肉、豚肉、魚
  • トマト、ホウレンソウ、カボチャ、ダイコン、ジャガイモなどの野菜
  • 木綿豆腐
  • メープルシロップ
  • バター、マーガリン
  • 緑茶、紅茶

高FODMAP食

  • パン、パスタ、うどん、ラーメンなどの小麦粉製品
  • たまねぎ、アスパラガス、長ネギ、ニラ、サツマイモなどの野菜
  • ソーセージ
  • 大豆、納豆、豆乳
  • はちみつ
  • 牛乳、ヨーグルト
  • チョコレート、アイスクリーム
  • ウーロン茶

実践方法

1スタートから4~6週間は、高FODMAP食を徹底的に避ける

治療開始から4~6週間は、徹底的に高FODMAP食を避けます。
これにより症状が改善した場合には、「いずれかの高FODMAP食が過敏性腸症候群を引き起こしている」という判断ができますので、Step2へと進みます。
症状が改善しない場合には、高FODMAP食以外の原因(ストレス、生活習慣の乱れなど)にアプローチします。

26週間が経過してからは、高FODMAP食の摂取量を増やしていく

高FODMAP食を1種類ずつ、食べていきます。
食後に過敏性腸症候群の症状が現れる食品と、症状が現れない食品とを分けていきます。地道な作業となりますが、安心して食べられる食品を見つけるための工程ですので、頑張りましょう。

3原因となる高FODMAP食を避けた食事を行う

食後に症状が現れた高FODMAP食、つまり過敏性腸症候群の原因となる食品を取り除いた食事を摂っていきます。多数の食品を取り除く必要がある場合には、他の食品を代用するなどして、栄養が偏らないようにしましょう。

よくあるご質問

過敏性腸症候群を治療しないでいると、どうなりますか?

原因を除去しない限り、症状が続くことになります。症状がストレスとなり、さらに過敏性腸症候群の症状を悪化させるというケースも見られますので、放置しないようにしてください。
また、放置することで虫垂炎や大腸がんのリスクが高くなると言われています。

過敏性腸症候群の分類不能型と診断されましたが、薬物療法は必要でしょうか?

下痢型、便秘型、交代型、分類不能型のいずれの場合も、基本的には薬物療法が必要となります。
症状を和らげることを目的とした対症療法として、症状に合わせた薬を処方します。

過敏性腸症候群の原因は、ストレスにあるのでしょうか?

はっきりとした原因は分かっていませんが、現在のところ、ストレスが発症に影響しているものと考えられます。
ひどい下痢で日常生活に支障が出ることがストレスとなり、さらに症状を悪化させてしまうケースも見られます。その意味で、対症療法としての薬物療法は、悪循環を断ち切るための大切な治療となります。

毎日の生活で気をつけるべきことはありますか?

規則正しい生活を送ること、栄養バランスの良い食事を摂ること、睡眠を十分に摂ることなど、一般的な「生活習慣の改善」への取り組みが大切となります。適度な運動も、無理のない範囲で取り入れましょう。